わたしを離さないで
2006.07.17 Monday

『わたしを離さないで』
カズオ・イシグロ/著 土屋政雄/訳(早川書房)
あさこさんの記事を読んで購入。
なんの予備知識もなく読み始めたのだけれど、結果としてはそれで正解だったようだ。
作中の大人達が、少しずつほのめかしながらその全容は注意深く伏せている秘密、それを主人公たちと同じ立ち位置で体験できたからだ。
キャシーは全寮制の学校へールシャムの生徒。
この学校が何のための存在なのか、本質的なことは生徒達には明かされない。靄に包まれたように不明瞭な視界の中で、彼女は少年期から青年期にかけてを過ごす。
その狭い人間関係の中で起きる生々しい感情のぶつかりあいに、物語の半分以上が割かれている。とりわけキャシーとルース、二人の少女のひりつくような緊張感ある関係。子供時代の友情は恋愛に似ている。苛立ち、嫉妬、それでいて離れがたい愛着心……。
そして物語の終盤に至って、そうした「当たり前の幼年時代」を与えられたことの幸福と残酷さを、私たちはキャシーと共に思い知らされることになる。
最初に覚えたのは怒りに近い感情だった。
あらかじめ制限を与えられた、本人にとっては無為に近い命を生きるのに、人間らしい感情を知ることや思い出を残すことに何の意味があるだろう。どうせ無に帰すのなら最初から何も知らない方が良かったのに。
しかしそう思った次の瞬間に気づくのだ。
制限があるのは私たちだって同じではないかと。
最後の、あまりに虚無的で美しい場面を読みながら、私の頭の中ではジェーン・バーキンの歌うBallade de Johnny-Janeが鳴っていた。全然関係ないはずなのに、なぜか。
Hey Johnny Jane
Les décharges publiques sont des atlantides
Que survolent les mouches cantharides
Hey Johnny Jane
Tous les camions à benne
Viennent y déverser bien des peines infanticides
…
Hey Johnny Jane
Un autre camion à benne
Viendra te prendre pour t'emmener vers d'autres Florides
ヘイ、ジョニー・ジェーン
ゴミ捨て場は蠅の飛び回るアトランティスだ
ダンプカーはここに嬰児殺しの苦しみをぶちまけに来る
ヘイ、ジョニー・ジェーン
別のダンプカーがやって来て
お前をもう一つのフロリダに連れていってくれるさ
コメント
わわ!リンクまで貼っていただいて…!
ありがとうございます!
ラストシーンは残酷で、でもとても静かで美しくて読み終えたあとも印象に残りますよね。
読み終えて1ヶ月たちますが、いまだにこの本についてぐるぐると考えてしまいます。
カズオ・イシグロってすごいな!と今更ながらに思いました(笑)
ありがとうございます!
ラストシーンは残酷で、でもとても静かで美しくて読み終えたあとも印象に残りますよね。
読み終えて1ヶ月たちますが、いまだにこの本についてぐるぐると考えてしまいます。
カズオ・イシグロってすごいな!と今更ながらに思いました(笑)
2006/07/19 02:55 by あさこ
あさこさん
こちらこそ、あさこさんのおかげでこの本を読むことができて感謝しております!
ラスト印象的ですよね。
もう少ししたら再読してみようかな〜と思ってます。
一度目は先入観のない状態で読み始めたので、二度目はまた違った感想が出てくるかも…
こちらこそ、あさこさんのおかげでこの本を読むことができて感謝しております!
ラスト印象的ですよね。
もう少ししたら再読してみようかな〜と思ってます。
一度目は先入観のない状態で読み始めたので、二度目はまた違った感想が出てくるかも…
2006/07/19 23:11 by Mlle C
以前にコチラで拝見して以来、ずっときになっていました。
やっと読むことができました。
未だ、呆然としています。
ブレードランナーや、「A」と「A2」を観た時と同じ行き場のなり憤りを覚えました。
素敵な本のご紹介、ありがとうございます。
PS.なぜか、コメントできない。。
重複してしまったらごめんなさい削除してくださいね。
お手数おかけいたします。
やっと読むことができました。
未だ、呆然としています。
ブレードランナーや、「A」と「A2」を観た時と同じ行き場のなり憤りを覚えました。
素敵な本のご紹介、ありがとうございます。
PS.なぜか、コメントできない。。
重複してしまったらごめんなさい削除してくださいね。
お手数おかけいたします。
2006/08/22 11:39 by pico
picoさん
お礼はあさこさんに!
あさこさん改めてありがとう!!
本当に、久し振りに密度の濃い小説を読んだと思いました。
「悲しい」とか「泣ける」といった単純な感情ではなく、心のもっと深い部分に複雑な感慨を呼び起こす作品ですね。
お礼はあさこさんに!
あさこさん改めてありがとう!!
本当に、久し振りに密度の濃い小説を読んだと思いました。
「悲しい」とか「泣ける」といった単純な感情ではなく、心のもっと深い部分に複雑な感慨を呼び起こす作品ですね。
2006/08/22 23:35 by Mlle C
私も読みました。
残酷さがこんなにも静かに描かれている小説に心が絡めとられたような…そんな読後感を味わっています。
ジェーン・バーキンのエキセントリックな歌声と雰囲気が、確かに! フランス語なのに(フランス語だからか)よく合いますね。全体に流れる空気が小説に似ています。
Mlle.Cさんは、ジェーン・バーキンがお好きなのかしら?
残酷さがこんなにも静かに描かれている小説に心が絡めとられたような…そんな読後感を味わっています。
ジェーン・バーキンのエキセントリックな歌声と雰囲気が、確かに! フランス語なのに(フランス語だからか)よく合いますね。全体に流れる空気が小説に似ています。
Mlle.Cさんは、ジェーン・バーキンがお好きなのかしら?
2006/09/30 11:31 by ワルツ
ワルツさん
読みましたか!
「泣ける」小説ではないけど、読み終えてしばらく呆然としてしまいました。
やっぱり残酷という表現が一番しっくりきますね。
勧めてくださったあさこさんに感謝です。
>Mlle.Cさんは、ジェーン・バーキンがお好きなのかしら?
バーキンはフランス好きなら誰もが一度は通る道です(笑)
読みましたか!
「泣ける」小説ではないけど、読み終えてしばらく呆然としてしまいました。
やっぱり残酷という表現が一番しっくりきますね。
勧めてくださったあさこさんに感謝です。
>Mlle.Cさんは、ジェーン・バーキンがお好きなのかしら?
バーキンはフランス好きなら誰もが一度は通る道です(笑)
2006/10/01 03:14 by Mlle C
コメントする
この記事のトラックバックURL
http://journaldepf.jugem.cc/trackback/582
トラックバック
2006/08/22 12:53
わたしを離さないでカズオ イシグロ 早川書房 2006-04-22売り上げランキング : 36おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools 内容(「BOOK」データベースより) 自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。キャシーが生まれ育っ
おかぼれもん。
2006/09/30 11:32
◆ 『 わたしを離さないで 』 カズオ・イシグロ 著
土屋政雄 訳 2006年 早川書房
抑制された描写の中に、閉じ込められた思いの丈を感じた物語。多くを語るのは憚られます。あさこさんの紹介で読むことが出来ました。彼女に本当に感謝しています。
ワルツの「うたかた日記」
2006/10/18 16:44
胎児は、母親のお腹の中で、ずっと音を聴き続けている。
電車に乗っていると眠くなる原因である、あの音。
すべてを凌駕し、抗うことのできない音。
遠くから聞こえる、弱くて、強い音。
この小説は、とてもとても
うるしのうつわ うたかたの日々の泡